情熱・熱意・執念の経営 永守重信 書籍レビュー

情熱・熱意・執念の経営 永守重信 Kou’s特選!おすすめ本
著者/永守重信 発行所/株式会社PHP研究所

経営と生き方の指南書

本書は、日本電産株式会社の創業者である、永守重信氏による経営と生き方の指南書ともいえる内容となっています。
氏の幼少期から学生次時代、そして会社設立から世界展開期まで数々のエピソードを交えながら短編形式にて記述されていきます。
生活難から、高校生時代より学習塾の経営に乗り出すなど、飛び抜けた発想と行動力で、若き頃より経営者としての片鱗が垣間見えるエピソードなどが綴られます。

kou
kou

それでは、特に印象に残ったエピソードを5篇、紹介させて頂きます。

一番以外はビリと同じ

私は物心ついたころから、近所でも評判になるほどの負けず嫌いで、勉強でもスポーツでも、遊びや喧嘩でさえも人に負けるのが嫌で、とにかく「一番以外は、たとえ二番であってもビリと同じだ」と考えていて、この気持ちは年々強くなり、やがて「俺は社長になる以外に道はない」とさえ思いこむようになりました。
高校時代に自宅で塾の経営を始めた私は、中学生の進路指導を行う際でも、進学希望の学校を提示する生徒に対して「そんな高校へ入っても、ビリになるだけだ。もう2ランク落として△△高校へ行けば絶対に一番になれる」と、私は一番になりたいだけではなく、周囲のみんなにも一番になることを勧めていたのです。

kou
kou

私たちは競争社会の中を生きています。
向上心からの競争は、自己研鑽などの面においても一時的には良い効果を得ることはありますが、過度な競争はストレスを生み精神的、身体的な弊害の原因ともなりかねず、その後の人生に影響を与えかねません。
自己の能力、許容量を客観的に評価し、余裕を持った人生の選択をすることで、心の余裕が生まれ、結果、強固な自己肯定感となるのでしょう。

常に「一番にこだわる」ことを考えることは、「どうすれば一番になれるのか」を考え続けることであり、それは自己肯定感を高め続けるための余裕のある心の持ち方なのだろうと考えます。

トイレ掃除

わが社では1975年ごろから新入社員は一年間トイレ掃除をするという習慣ができあがりました。しかも、ブラシやモップなどの用具は一切使わず、便器についた汚れを素手で洗い落とし、ピカピカに磨き上げる作業を一年間続けます。
これが身につくと、トイレを汚す者はいなくなり、放っておいても工場や事務所の整理整頓が行き届くようになってきます。
これが「品質管理の基本」で、徐々に見えるところだけではなく見えないところにも心配りができるようになれば本物です。

kou
kou

「小事を大切に」という言葉があります。
その「小事」に気付ける感性を身に付けるには、目に見えない部分に配慮することが出来なければなりません。
極論、トイレ掃除はやらなくても物事を進めることには支障ありませんが、自他ともに誰しもが清潔なトイレを利用したいと考えるはずです。
すべての人に毎日幾度となく利用されるトイレを清潔に保つことができぬようでは、他者からの信頼など得ることなど現実味を帯びず、仕事や物事の質を高めることなど論外といえましょう。
トイレ掃除をすることは、利用者のことを考える行為であり、総じて他者の立場になって考えるところに品質管理の基本、仕事の基本、生き方の基本があるのだと考えます。

先んずれば人を制す

1980年度の入社試験は、試験会場に早く到着した者から順に採用していくというものでした。
この試験を実施する前に、社内で一定期間調べてみると、出社時間の早いか遅いかによってその成績に差があることが、はっきりとデータにもあらわれていたのです。
「先手必勝」とか「先んずれば人を制す」という言葉がありますが、ビジネスの世界でも例外ではなく、時間的な余裕は心のゆとりにつながり、この積み重ねがやがて大きな差となるのです。

kou
kou

「先手を打つ」の言葉通り、素早い行動や対処は、時間の余裕を生み、その改善の有余さえも生まれます。
時間の余裕は心の余裕ともなり、2手、3手と次手を打つことや、改善に要する時間の余裕も生まれ、より質の高い結果となりえましょう。
一日24時間は皆、平等に与えられており、時間を意識した素早い行動は、他者の時間を大切にする考え方ともなり、その行動や思考こそが信頼関係の源泉になるのだろうと考えます。

加点主義を貫く

わが社は創業時代から加点主義を貫いており、怠けた結果の失敗は徹底した叱責の対象となりますが、評価が下がることはなく、前向きな取り組みや行動については結果のいかんを問わずプラス評価を行います。
反対に減点主義をとれば、言われたこと以外に何もしない社員のほうが、積極的に新しいことにチャレンジして失敗した社員よりも高い評価になってしまい、こんな理不尽を放置しておくと、社員はやる気、意欲を失っていくことは目に見えています。

kou
kou

「ことなかれ主義」「サラリーマン根性」などという言葉もありますが、まさに「減点主義」の弊害が生んだ言葉ではないでしょうか?
会社員として働くにいたっては、会社の評価に依存するところが多くなります。
特に新入社員など若い人ほど夢や希望を抱き、自分の力を試し社会に役立てたいという気持ちが強くあるものでしょう。
そういった若者の高い志や思いを「生意気だと」押さえつけるのではなく、前向きに評価される社会であって欲しいと切に願います。

メーカーが生き残る条件

メーカーの生命線は、価格、品質、納期だと言われます。
このどれか一つが欠けていたとしても、他の二つで補ってあまりあるものづくりを行えば、決して売れなくはないと思います。
例えば「価格は高いが、品質と納期では他社を大きくリードしている」というお客様の評価を得ることこそが、中堅、中小メーカーの生き残っていく方向です。
特にベンチャー企業は、価格の安さだけで勝負する分野に参入すると自分で自分の首を絞める結果になります。

kou
kou

質の高い仕事とは、他者(お客様)に喜ばれることにあります。
お客様の満足度をどう満たしていくかを考え続け、自己研鑽へのたゆまぬ努力の先に、競争社会のなかであっても仕事として永続していける「価値」が生まれるのだと考えます。

他者の満足度を満たすことで、適正な自己の利益もしっかりと受け取ることは、経済を円滑にまわしていくことでもあり、そういう流れを生み出すことのできる企業や個人は、自然と社会から必要とされていくのでしょう。
質の高い仕事とは、社会貢献なのだといえましょう。

本書を読み終えて kou’sレビュー

受動的ではなく常に能動的に行動することで引き寄せられる、氏の経験してきた様々な経緯と現実は、今を生きる私たちの生き方においても大いに参考にすべきでしょう。
「このままでいいのか?」と、常に現状への疑問を抱き続けることが、改善と打開に向けての発想力や行動力の源泉となっているのでしょう。

kou
kou

経営と生き方を学ぶ、人生の指南書として多くの方に読んでいただきたい
最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました