道をひらく The Path 書籍レビュー vol.1

道をひらく 松下幸之助 kou's書籍レビュー Kou’s特選!おすすめ本
著者/松下幸之助 発行者/江口克彦 発行所/PHP研究所

雨が降れば傘をさす

雨が降れば 人はなにげなく 傘をひらく
この 自然な心の働きに その素直さに
私たちは日ごろ あまり気づいてはいない
だが この素直な心 自然な心のなかにこそ
物事のありのままの姿 真実をつかむ
偉大な力があることを 学びたい
何ものにもとらわれない 伸びやかな心で
この世の姿と 自分の仕事をかえりみるとき
人間としてなすべきこと 国としてとるべき道が
そこに おのずから明らかになるであろう。
(本文中より)

この一篇から始まる本書の特徴は、総120篇におよぶ短文集で、もともと、PHP研究所の機関誌「PHP」の裏表紙に連載されてきた「松下幸之助」の短文を選編集された書籍です。
本書を手に取り開くと、見開き2ページが一篇の短文集となっており、1ページ目から順に読み進めるのも良し、目次から気になる項から選んで読むといった読み方もおすすめで、読む人によって様々な読み方が楽しめる書籍といえるでしょう。

松下幸之助
松下幸之助

松下幸之助(まつしたこうのすけ)
グレゴリオ歴1894年〈明治27年〉11月27日、ユリウス歴1894年11月15日 – 1989年〈平成元年〉4月27日)は、日本の実業家、発明家、著述家。 パナソニック(旧社名:松下電気器具製作所、松下電器製作所、松下電器産業)を一代で築き上げた経営者である。異名は「経営の神様」。 その他、PHP研究所を設立して倫理教育や出版活動に乗り出した。さらに晩年は松下政経塾を立ち上げ、政治家の育成にも意を注いだ。(Wikipediaより引用)

年齢に関わらず、日々の生活の中で常に悩みはつきもので、おそらくはこれからも様々な課題や問題にぶつかるでしょう。
これまで自分自身も、本書には何度も心の支えとして助けられた経緯があります。
書籍の大きさも小説文庫サイズなので本書を常に携帯して、普段からカバンに入れておくなどしておいて、ふと、思い悩んだ時に目次からピンとくる項を開いて読んでみるといった読み方がおすすめです。

先人の考え方考は、時代と共に古くなってその時代感に合わなくなってくるものですが、松下幸之助氏の考え方や思考に感化された人々によって、個人の心身、社会のより豊かな繁栄を願いながら、現在においても再編纂され、様々な媒体にて発信され続けています。
松下幸之助氏は現在でも「経営の神様」としてその精神や考え方は、経営にとどまることなく多くの人々の人生の指針として広く認知されているのは、現在においても全ての人々に共通する「人情の機敏」が根底にあるのだと考えます。

本書を手にされたならば、普段の生活の中で常に本書を携帯して頂き、つまづき、思い悩んだ時に本書の目次をご覧頂ければ、ふと、心に響くタイトルが目に入ってくるでしょう。
それは、一過性のものではなく、その時々、心の状態によって感じ方はまるで違うものとなります。
重ねてきた年齢に応じても、感じ方、受け取り方はまるで違うものとなるでしょう。

そこには、時代が移り変わっても、人としてのあるべき生き方や活路を見出すヒントが必ず示されていることでしょう。

自分自身、本書を購入したのは15年ほど前になりますが、数多くの書籍がある中、現在においても本書は大切に保管し、ふと思い悩んだ時には見開くようにしており、人生の指針としてこれからも大切にしていきたいと考えています。
自分にとって特別な思い入れと位置付けにある本書「道を開く~THE PATH~」を、当ブログにて、紹介させて頂けることにも感謝します。

11章にわたり、松下幸之助氏自身の体験をもとに語られる多くのエピソードは、時代が移り変わっても、多くの人々の悩みに寄り添い、活路を見出すヒントを提示し続けていくことでしょう。
以下から、特に印象に残った、前半5篇を抜粋して紹介させて頂きます。

道をひらく

「道」 自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。 どんな道かは知らないが、ほかの人には歩めない。 自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。 広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。 淡々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。 この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。 なぐさめを求めたくなる時もあろう。 しかし、所詮はこの道しかないのではないか。(本文中より)

自分の人生に対して妥協やあきらめを、などということではなく、今、自分に与えられ示された道を信じ、休まず歩み進める中で、自分なりの未来を形作っていくことが尊い行動であるといえるでしょう。
「隣の芝生は青い」という言葉もあるように、他人、よそ様の人生に心奪われることなく、自分だけに与えられた尊い道を懸命に歩み続け、たとえその先に苦難が待ち受けていたとしても、新たな活路を見出し、苦難を乗り越えていくことで、その一連の経験は後に自分の人生に対しての深い喜びや感慨として残り、貴重な経験値として今後の生き方として活かしていけるのだと考えます。

人事をつくして

「人事をつくして天命を待つ」ということばがある。
まことに味わい深いことばである。
私心にとらわれることなく、人としてなしうるかぎりの力をつくして、そのうえで、静かに起こってくる事態を待つ。
それは期待どおりのことであるかもしれないし、期待にそむくことでもあるかもしれない。
しかしいずれにしても、それはわが力を越えたものであり、人事をつくしたかぎりにおいては、うろたえず、あわてず、心静かにその事態を迎えねばならない。
そのなかからまた次の新しい道がひらけてくるであろう。(本文中より)

問題や困難を予見して、対応策を講じておくことは大切なことです。
しかし、講じても講じても次々と立ちはだかる困難というものには頭を悩ませるものでしょう。
「もう手は尽くした」「思いつくかぎりの策は講じた」
こういった境地にいたったときこそ、「人事をつくして天命を待つ」との心境にいたることができ、その先は人知の手がおよばぬところであって、まさに願い、祈る思いとなります。
「人事をつくして天命を待つ」との思いにいたれるかどうか、人としてなしうるかぎりの力をつくしたか―――。
ときに自分自身に謙虚に自問自答することを忘れてはならないと考えます。

長所と短所

この世の中は持ちつ持たれつ、人と人との共同生活によって、仕事が成り立っている。
暮らしが成り立っている。
この共同生活を円滑に進めるためには、いろいろの心くばりが必要だけれども、なかでも大事なことは、おたがいにまわりの人の長所と欠点とを、素直な心でよく理解しておくということである。
そしてその長所を、できるかぎり発揮させてあげるように、またその短所をできるかぎり補ってあげるように、暖かい心で最善の心くばりをするということである。(本文中より)

人間は完璧な存在ではなく、それぞれに個性を持っています。
長所もあれば短所もあり、いわゆる得手、不得手があるのが個性ではないでしょうか。
しかしときに人は相手を、思いどうりにしようとしたり、過剰な期待を持ってしまうことがあるようです。
人は他人の協力なくしては生成発展することはできません。
だからこそ相手の個性を尊重し長所を発揮してもらい、「長所は短所」「短所は長所」ともいわれるように、お互いに持っていないものを補い合う努力をした方が、生産的な活動となるのではないでしょうか。

思い悩む

わからなければ、人に聞くことである。
己のカラにとじこもらないで、素直に謙虚に人の教えに耳を傾けることである。
それがどんな意見であっても、求める心が切ならば、そのなかから、おのずから得るものがあるはずである。
おたがいに、思い悩み、迷い憂えることを恥じるよりも、いつまでも己のカラにとじこもって、人の教えを乞わないことを恥じたいと思うのである。(本文中より)

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ともいわれます。
自分に無い知識は、いくらあがいても勉強しなければ得ることはできません。
しかしながら勉強しても得られなかった場合、あなたはどうしますか?
「人に聞くなど恥ずかしい」
「無知だと思われないだろうか」
「こんなことも分からない人だと笑われないだろうか」
このように考え、素直に人に聞くということをためらってはいないでしょうか。

人に聞きやすくする方法のひとつとして、聞く相手を選ぶということだと考えます。
「この人なら気持ちよく教えてくれるだろう」と、人間性の面で信頼のおける人を日頃から見つけておくことも、いざという時には役に立つでしょう。

とにかく、恥やプライドは結果として自分の成長を妨げるつまらないものです。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」の一言です。

岐路にたちつつ

おたがいに、いっさい何の不安もなく、危険もなければ心配もなく、したがって苦心する必要もなければ努力する必要もない、そんな境遇にあこがれることがしばしばある。
しかしはたしてその境遇から力強い生きがいが生まれるだろうか。
やはり次々と困難に直面し、右すべきか左すべきかの不安な岐路にたちつつも、あらゆる力を傾け、生命をかけてそれを切りぬけてゆく―――
そこにこそ人間としていちばん充実した張りのある生活があるともいえよう。
困難に心が弱くなったとき、こういうこともまた考えたい。

仕事や私生活のなかでさまざまに訪れる困難や不安材料などは誰にもあることでしょう。
できれば、平々凡々と日々何の苦労もなく、心穏やかに生きていきたいと考えるのは誰しも同じ願いでしょう。
しかし、何の問題もない日々が続いたとしたら、そこには創意工夫や努力が生まれることもなくなり、人はかえって堕落した生き方になっていくのではないでしょうか。

野球やサッカーなど相手チームのいないスポーツが面白いでしょうか?
敵キャラやボスキャラが出てこないゲームが面白いでしょうか?

困難は乗り越えられる大きさのものしか現れないと言われますし、乗り越えられる人にしかやってこないとも言われます。
困難を困難と考えず、果敢に乗り越える行動こそが、長い目で見ると生きがいとなるのかもしれません。

本書を読み終えて kou’s書籍レビュー

kou
kou

最初の一篇「道」を始めて読んだ時、当時の自分の境遇や悩みと重なり、思わず涙が出たのを今でも忘れられません。
これまでもこれからも、人生を歩む上でなくてはならない特別な一冊です。

kou
kou

松下幸之助氏が生きた時代より年月を経ても、今なお共通する普遍的な人生の指針」が詰まった本書をぜひ手に取って頂き、今後の人生の羅針盤として多くの人々の悩みに寄りそい、活路が見出されることを切に願います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

道をひらく 松下幸之助 kou's書籍レビュー
道をひらく 松下幸之助 kou’sレビュー

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