著者／稲盛和夫 発行者／江口克彦 発行所／PHP研究所
働き方、生き方、心の在り方を示した指南書
稲盛和夫氏は、京都セラミック株式会社（現京セラ）の創業者です。
本書を読み進めると、経営書というよりは、経営者視点から人間として日本人としてとしての働き方、生き方、心の在り方を示した指南書としての色が濃い書籍です。
人生を歩むうえで、仕事に取り組む姿勢や考え方や、リーダーとなった時の働き方や心のありようや考え方などを、見開き２ページごとに読みやすく記述された全編237篇に及ぶ短編集です。
これから特に印象深かった、5編を紹介させて頂きます。
夢を実現する
若い人は「偉大なことを実現したい」という夢を持つものです。
それは、一歩一本の地道な努力から生まれ、努力もなしに大きな夢を描いていたのではいつまでも単なる夢にとどまります。
一歩一歩の積み重ねの結果は様々な相乗効果を引き起こし、その連鎖はいつのまにか信じられないような高みにまで自らを運んでくれ、これが個人の人生においても、企業経営においても、夢の実現に至る唯一かつ確実な方法なのです。
人生を前のめりにいきていくためにも、夢を描くのは効果的でしょう。
夢実現は、一日一日の地道な行動の積み重ねによって可能であり、近道など無い。
夢を描くだけなら、それは単なる妄想であり、地道な行動の積み重ねこそが夢実現の唯一の方法なのでしょう。
楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
新製品開発や新技術開発など新しいことを進めて成功していくのは、まず、構想を夢と希望を持ち、楽観的に目標設定し、計画の段階ではどのくらい難しいのかを慎重かつ悲観的に見つめ直し、その悲観的な要素に対する対策を練った上で、楽観的に行動へ移るのです。
新しいことを始めるには、このように頭を切り換えていくか、それぞれの段階に見合った人を配することが必要です。
目標を達成するためには、まず描き、慎重に検討し対策を練ったうえで自信を持って達成に向けて行動するといった、いわば柔軟な思考が必須なのでしょう。
土俵の真ん中で相撲をとる
常に余裕がないと考え、瀬戸際にまで追い詰められる前に力を振り絞るようにしなければなりません。
土俵際つまり窮地に陥らなくても、リスクが想像でき、事前に手を打てるようでなければなりません。
安全弁を置いた進め方をしなければ、人生も仕事も経営も決して安定したものとはならないのです。
全てにおいてリスク管理は重要であって、それにより得られる様々な「余裕」というものが豊かな人生を歩むうえでの潤滑剤となり得そうです。
筋を通す
「話に筋が通る」とか「筋が通らない」とか言います。
この「筋」とはその人が持つ判断基準、いわば人間の精神の指標のことです。
筋を持たない人は、何もできません。自分の基準をどこに置くかが分からないからです。
筋を持った人は万般に通じていきます。それは、筋というものが万人に納得しうるものだからです。
正しい判断をするには、自らの中に指標が確立されていなければなりません。
自分らしい人生を歩むということは、自分なりのひとつの軸を持つべきでしょう。
しかしそれは、「頑固」であってはならない、正しい判断をするためにも、万人に納得しうる基準であるべきでしょう。
今日を懸命に生きる
私は、長期の経営計画を立てたことはありません。
今日のことさえうまくいかず、明日も分からないのに、十年先が見えるわけがないと思っていたからです。
今日一日一日一生懸命に仕事をし、工夫を重ねれば、その一日の連続が5年後、10年後、大きな成果となっているだろうというように考えたのです。
「今日を完全に生ききれば、明日がみえる」ということを断言することができます。
将来を見通すということは、今日を生きることの延長線上にしかないのです。
人は限られた時間を生きています。
その限られた一日一日を大切に試行錯誤しながら過ごすという、一見地味な積み重ねの先に、将来の夢なり、目標が見えてくるのではないでしょうか。
本書を読み終えて kou’s書籍レビュー
稲盛和夫氏の創業した京都セラミック株式会社（現京セラ）の経営の根底にあるであろう、経営理念ともいえる本書の理念は、現代の私たちの生き方や考え方にも十分つながる、普遍的な生き方の哲学とも言えるでのではないでしょうか。
仕事に取り組むうえで、ひいては人生を豊かに彩り、生ききるための指南書として一読されてはいかがでしょうか。
働く全ての人におすすめします。
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