社員心得帖 松下幸之助

社員心得帖 松下幸之助 kou'sレビュー Kou’s特選!おすすめ本
著者/松下幸之助 発行者/江口克彦 発行所/PHP研究所

社員として持つべき心得とは

多くの人は、学校を卒業と同時に「会社」という組織へ入ることで、社会人となる道を選ぶのではないでしょうか?
本書では、新入社員として会社の一員となられた人や、中堅社員として部下の育成管理などに日々奮闘する人、そして幹部社員として経営そのもの関わる人達に書かれた、「会社という組織に属する社員」としての持つべき心構え、かくありたい立ち居振る舞いなどを、松下幸之助氏独特の妙味ある切り口で記述された教科書といってもいいような一冊です。

松下幸之助氏独特の人情の琴線に触れるようなやさしくも厳しい指摘、アドバイスは現代の第一線で活躍する私たちにとり、時代は変わっても共通する人情の機敏に則した良薬ともいえます。
会社という組織に属すると、時に困難に迷ったり、理不尽な出来事に煩悶することもあるでしょうが、そんな時のためにこそ、ひょっとしたら私たちは本の中の氏のようにそっと寄り添い、厳しく叱りつつも道を示してくれる、そんな人生の師を常日頃から探し求め続けているのかもしれません。

運命と観ずる覚悟を

新入社員として会社に入ったら、まず何よりも”自分がこの会社に入社したのは、一つの運命である”というような覚悟をもつことが大切だと思います。
学校を卒業し、就職するにあたっては、それぞれに、親や先生、先輩などにも相談しつつ、自分の志望の会社を決めたと思います。
また会社は会社で、”こういう人が必要だ”ということで採用を決定します。
ですから会社に入るということは、そういう双方の意思が一致したことによって実現したものだ、ということができると思うのです。(文中より抜粋)

会社に入り働き出すと、様々な困難な課題にぶつかることが多くあります。
悩み、苦しむようなことが続くと、もう投げ出して辞めてしまいたいと自暴自棄になってしまうこともあるかもしれません。
しかしそんなときこそ、会社選びをしていた頃の期待感や緊張感、今の会社に内定が決まった時の希望にあふれてワクワクする気持ちや、就職が決まったことによる安堵感など、翻って思い出すことで、今の会社と今ある仕事との不思議な縁を感じることができると思います。
悩み、苦しむような問題に出くわした時こそ、初心を省みることでそれぞれに新たに見えてくる何かがあると考えます。

無理解な上司、先輩

新入社員は、初めはだれでも、上司、先輩について仕事を教えてもらいます。
その場合、当然のことながら、上司、先輩にはいろいろな人がいます。
人格的にも仕事の面でも非常に立派で、親切だし、文字どおりかゆいところに手が届くような指導をしてくれるという人もいるでしょう。その反対に、人柄もちょっと関心しないし、指導もあまりよくはしてくれないという人もあると思います。
その場合、どちらの上司、先輩についたほうがいいかということです。(文中より抜粋)

ここでは新入社員として必ず遭遇するであろう、「良い上司・先輩」と「無理解な上司・先輩」について氏の考え方が語られています。
人格的にも仕事の面でも優秀な先生の下につけば、非常に良い指導を受けられ、きわめて好ましい状況にはありますが、ある程度のところまでは一様に上達はしても、それ以上に画期的なものは生まれにくい。反面、無理解で非常識な先生のもとで鍛えられた人の方が創意工夫をしつつ幾多の困難を耐え忍んできた経験の分、先生を超えるような名人級の人間が生まれやすいと述べています。

これはまさに人間の妙味、人情の機敏がなせることで、教える側と、教わる側の真剣勝負の姿勢があってこそでしょう。
年を追うごとに若い人たちの忍耐が弱くなっているとも言われていますが、「人は人の役に立ちたい」「自己を成長させたい」という本来の欲求は世代を超えても共通にあると考えます。
私たちはどうせ教わるなら、親切丁寧で、自分にとって無理のない指導を求める反面、自分にはとうてい思いつかないような突拍子で一見、非常識だと思える考え方や行動が、これまでの世の中を変えてきていることも事実です。
向上心を持ちつつもこれまでの延長線上ではなく、新しい考えをどんどん取り入れ成長しようとする柔軟な発想こそが、自分や会社、ひいては社会に貢献することになるのではないでしょうか?

信頼される第一歩は

たとえば私が「君、すまんが、こういう人のところへ電話をかけてくれんか。きょうの午後お会いする約束をしていたのだが、急に都合が悪くなった。”申しわけないがあすにしてほしい”ということを電話でお伝えしておいてくれ」と頼んだとします。そういう場合、だれもが「はい、承知しました」と言って、電話をしてくれます。ところが、そのあとで、「先ほどの電話、かけておきました。先方さんもそれで結構だということでした。」とキチンと報告してくれる人と、そうでない人がいるのです。皆さんの場合はどうでしょうか。
平凡なこと、ささいなことをおろそかにしないというところに、信頼あつく、その会社になくてはならない人になるための第一歩があるという気がするのです。(文中より抜粋)

「報・連・相」は、ほとんどの人が知っている言葉ではないでしょうか?
「報告・連絡・相談」を短縮した言葉ですが、多くの場面であたりまえに活用されていますが、頭で知ってはいても、「報・連・相」ができない人は私の経験上でも大変多くいました。
こういう人達は「報・連・相」を遵守することで情報の共有を図り、多人数で構成される場面において、円滑なコミュニケーションと運営を図るという目的の重要性を残念ながら理解できていないのだと考えます。

多種多様で多くの人達で構成される場面において、「報・連・相」は単なる報告業務にとどまらず、人間関係の潤滑油としての役目を果たす、大切なコミュニケーション手段としての一面もあることを、全ての人たちが理解し活用できる社会になればと考えます。

人を育てる要諦

”企業は人なり”ということがよくいわれますが、会社の経営において、よき人材を育てる必要があることは、改めていうまでもありません。一つの部や課においても、人材が次々に育ってこそ、その成果もあがり、発展が生みだされるわけで、人材育成は、責任者が一刻もゆるがせにできない大切な任務の一つです。

部下社員を持つにあたり、一つの部や課であったとしても、方針、目標を会社全体の方針に沿うかたち明確に示していくべきであって、部下社員はそれに沿うかたちでそれぞれに努力していくというのがあるべき姿であろうことは言うまでもありません。
方針がしっかり示されなければ部下社員は何をどうしたら分からず何となく日々を送ることになり、自己の能力を高めることもなくなるでしょう。
かといって部下社員側も、何の指示もないからと、指示待ちの姿勢でいることは、自己の能力を高めるどころか、低下させることにもなりかねません。
示す側と示される側、お互いことあるごとに創意工夫をかさね、常に自己鍛錬に努めることが最善と考えます。

好きになる

自分は仕事が好きであるかどうか、ということを絶えず自問自答しつつ、仕事が好きになるように努めていきたい。
そして自分の娯楽をやめる必要はないけれども、三つの娯楽は二つにとどめて、仕事に面白味を見出し、味わうというようなことができるようになるならば、私はその人は、社員として必ず成功するでしょうし、仕事によって非常に救われる人である、そう思うのですが、いかがでしょうか。

「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。
今、従事している仕事は好きな仕事でしょうか?もしくは、好きだと言えますか?
何をするにしても「好き」だという気持ちがあれば困難にも負けませんし、乗り越えるための創意工夫や、その戦略を練る過程でさえ楽しめるようになっていきます。
いま、「好き」だと思えない状況であっても、一つ一つの課題を創意工夫により、クリアしていくように、小さな成功体験を積み重ねることで、だんだんと今、従事する仕事が「好き」になってきます。
決して構える必要などなく、「好き」になるとは、「楽しむ」ことと言ってもいいと考えます。
人生の大半の時間を占める仕事ですから、どうせやるなら楽しんでしまった方が精神的にもプラスだし、自分の人生においても生産的な活動となりえるのではないでしょうか?

本書を読み終えて kou’s書評

多くの人が経験するであろう新入社員。私も、かつて、企業より内定を頂いた時の喜びと、初出社時の緊張感は今もなお鮮明に思い出されます。
社会人ともなれば学生時代の延長線上では通用しないことも多くあり、考え方のアップデートを余儀なくされるでしょうし、これまでの交友関係も徐々に変わっていきます。
それはけっしてネガティブなことではなく、生活する環境や思考の変革にともなう人生の土壌の変化といっても良いのではないかと思います。
日々の生活を農耕に例えると、土壌が変われば、土質、水質なども異なり、採れる作物も変わるでしょうし、結果、それにともなう交流する人たちも変わってきて、そこに新たな発見や喜びもあることと思います。
新たな環境に戸惑い、歩を進めることに躊躇したりすれば不安に駆られることと思いますが、だからこそ人は自ら進むべき道を照らし、希望を見出し指し示してくれる師や、助言を常に求めるのかもしれません。
そんな社会人として、会社員として、日々奮闘する全ての人にとって、本書は、一服の清涼剤となり得る一冊になることと考えます。

kou
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一般的な会社員としての経験は、それ以降の進む道、いかなる場面においても共通して役立つ知識や経験として身に付くと思います。
しかしながら時代経過とともに、情報スピードは日を追うごとに増し、より個人が情報の取捨選択能力を磨き続ける必要性を個人的には感じています。

kou
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本書は、時代に則した新しい書籍とはけっして言いがたいですが、松下幸之助氏の実践した考え方には、人が生産的に生きる上で現代でも十分に共通する普遍的な人生哲学が柱としてしっかりとあると考えます。
松下幸之助氏の実践した考え方を踏まえて、いまの時代と照らし合わせながら自分なりのアップデートにより脚色をし、実践してみる。その繰り返しの中にこそ、自己成長と社会貢献があるのではないかと考えます。

kou
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ぜひ、本書を活用し、充実した会社員ライフを送られることを切に願います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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