経営心得帖 松下幸之助 kou’s書籍レビュー

経営心得帖 松下幸之助 kou'sレビュー Kou’s特選!おすすめ本

著者/松下幸之助 発行者/江口克彦 発行所/PHP研究所

松下幸之助が語る、経営の妙味、神髄とは

本書は、経営に携わるすべてのビジネスマンに向け、松下幸之助氏自身の経験にのっとった観点から鋭く切り込む経営指南書としての性格が強い内容となっています。
時に人情の機敏に触れ、寄り添い、ささやきかけるような松下幸之助氏独特の考え方は、人間関係が希薄となりつつある現代を生きる私たちにとっても、大いに参考にすべき考え方と言えるのではないでしょうか。
本書を読み終えて、特に強く印象に残った5篇を自己コメントとともに、紹介させていただきます。
本書との出会いが多くの方々にとって、人生を豊かに生きる一助となりますように。

興味をもつ

経営の面でも技術の上でも、無限に改善していくことができる、そういう改善点を見出して、そこに創意を働かせて新しいものを生み出していく、そのことが面白くて仕方がない、もう眠るのも惜しいというようなことであれば、これは非常にうまくいくと思うのです。けれども、そのことにあまり興味が感じられない、むしろそれは苦しいことだと考えていたのでは、なかなか成果もあがりにくいと思います。

「好きこそものの上手なれ」の言葉があるとおり、まず興味を持つことからが始まりだと思います。
興味を持つには、ささいなことで構わないので、まず思いつくことに取り組んでみて、問題点に当たったら創意工夫と改善を重ね、課題を解決していくなどの小さな成功体験を繰り返すことで、次第にその取り組み自体にやりがいを感じ、興味が湧き、習慣となっていきます。
その一連の行動そのものが、いずれ興味の域を超え、気がつく頃には我がものとなり、その好循環に周囲の人たちをも巻き込んでいくのだと考えます。

苦情を生かす

苦情を言ってくださるというのは非常にありがたいことだと思います。そのおかげで縁が結ばれるわけです。苦情を言わない方は、そのまま「あそこの製品はもう買わない」ということで終わってしまうかもしれません。しかし不満を言ってくださる方は、そのときは「もう買わない」というつもりでも、こちらから出かけると「わざわざ来てくれたのだなあ」と話もし、それで誠意が通じます。ですから、こちらの対処の仕方次第では、かえって縁が結ばれる場合が多いと思います。

苦情を受けたら、とにかく先方の話をよく聞いてみることで、相手がどうして欲しいのかその対処法も見えてくると思います。
苦情を受けるのは誰でも嫌なもので、先方が立腹しているなら、なおのことです。
しかし、苦情を言う相手は、何とか改善を期待するから、また利用したいと考えているからこそ苦情を言うのであると考えれば、「苦情もまた良し」と考えられるのではないでしょうか。
苦情を言ってくる相手は、そのお店や会社にとってわが身を振り返させる、ありがたい神様のような存在なのかもしれません。

不景気には時を待つ

行きづまる会社を見ていますと、たいていは仕事がひまになったらうろたえて、無理をしてでも注文を取ろうとします。無理をして取ればそれだけ安くなります。その結果かえって損をして会社の破綻を招く結果になってしまいます。
反対に、そういう無理をせずに、"ひまはひまで仕方がない。これは一時的な現象なのだから、この機会に改めるべきは改めて、日ごろ怠りがちだったお得意に対するサービスをしておこう"とか"機械の手入れすべきものはしておこう"というような態度をとっている会社は、少しも衰えずに、かえって時を得て発展するという姿になっているのです。

この世には人知を超えた、自分の力ではどうにもできない事象が存在していて、天変地異や、人の心などがそうで、景気の浮き沈みもその一つでしょう。
ならば、それに抗うのではなく、むしろ受け入れ、その中で今できることを愚直に行う生き方の方がムリもなく、理にかなっているのではないでしょうか。
空に浮かぶ雲や、流れゆく川の水のようにゆるやかにしなやかにその瞬間を様々にかたちを変えながら生きていくところに計り知れない位、しなやかな力強さがあるのではないでしょうか。

謙虚な確信

謙虚な心持ちでいれば、他人の偉さが分かります。そうすると、自分の部下はたいてい自分より偉いなという気持ちになります。部下がアカンと思っているあいだは、謙虚であるとはいえません。もちろん、全部が全部というのではなく、自分より劣っている人もありましょうが、謙虚であれば、そういう部下でもその長所が分かり、その用い方も分かってくると思うのです。したがって、適当な提案に対しては、ただちに賛成できるから、意思決定も早く、仕事が水の流れるようにスムーズにやっていけるということになりましょう。

肩書や身分など立ち位置が上がるほど慢心せず、謙虚であることの大切さを説いた「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉があります。
常に他人の意見を聞く姿勢、また、いかに年下の人間であっても必ずそこに何か学びとなるものは見つかるはずで、しかしそう考えられるのは、まさに謙虚な心持ちであってこそです。
謙虚な姿勢であることで意見しやすい環境が常となり、その中で多くの衆知を集めることで自分一人の考えではおおよそ思いつかなかったような、素晴らしいアイディアがもたらせられるかもしれません。
そう考えると、わが身を囲む周囲の人たちこそが学びになる、先生や師匠のような存在に思えてきませんでしょうか。

新入社員でも

部下の提案についても、絶対に間違いないと思うのものだけを採用するのではなく、多少どうかと思うことについても「君がそこまで考えたのなら、まあやってみたまえ」と提案を聞き入れる態度も大切でしょう。そうすれば、部下からの提案や創意工夫も活発になり、ひいては部下にのびのびと仕事をさせることにもなると思います。
"命これに従う"という姿勢では、いかに多くの人材を擁しても会社は発展しません。いかに大きくなり、いかに多くの人材を擁するようになっても、若い人々が常に自由に意見を述べ、自由闊達に仕事ができる気風をなくしてはならないと思うのです。

上位者は、下の者へものを言うことはたやすいですが、下位者が上位者へものを言うことは、難しいことです。
そんな下位者の者たちの心持ちに配慮し、何ごとも自由に意見しやすい空気感や環境を整備していくことも、上位者に求められる価値ある考え方のように思います。
そんな風通しの良い環境があってこそ自由で闊達、既成概念に縛られない新しい発想が生まれ、それこそがこれからの未来を切り開いていく礎となるように考えます。

本書を読み終えて kou’s書評

松下幸之助氏にとって仕事というものは、求めるのも人、つくり出すのも人、営むのも人であり、人の手なくしては成り立たないものでもあり、そういった当たり前の基本を大切にしておられたのだろうと感じます。
であるからこそ、人が人として最大限の力量を発揮し、個人個人が最大の社会貢献度を示すことに常に尽力されていたのではないでしょうか?
そういった氏の姿勢や考え方に、多くの人たちが感銘を受けたことで、現代にいたるまで粛々と受け継がれてきたことはいうまでもなく、これからの未来に向けて引き継いでいくべきとも改めて考えました。
人は社会に貢献したい、役に立ちたいという欲求を無意識に持っており、そんな人の深層心理を十分に理解し、用い、活用しようとするところに「企業は人なり」という言葉の意味も真に生きてきて、その先には自他ともに発展の道も開けてくるのではないでしょうか。

kou
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今まさに「個」の時代といわれ、よりいっそう個人の技量やスキルが求められ、発揮することがひとつの価値基準となる場面がこれからますます多くなると考えています。
そうした行動そのものが、価値の提供となり、ひいては社会貢献となりうると思います。

kou
kou

経営に携わる方のみならず、お仕事に邁進される全ての方々にも経営者目線を養う観点からもぜひ、本書を手に取って読んで頂きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

経営心得帖 松下幸之助 kou'sレビュー
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